京都コムニタス2012講演会

P1000170.JPG 「非行が抱える発達の課題」と題して、京都光華女子大学大学院・石附敦教授に、非行と現代の少年の心理面、発達面の課題の関連についてご講演頂きました。

 まず、非行につながる少年の心性として「低い自己評価」を挙げておられました。日本青少年研究所による調査(2007)では「私は自分に大体満足している」の質問に「はい」と回答したのは、アメリカ53.5%、日本9.4%、「私は他の人に劣らず価値のある人間である」では、アメリカ51.8%、日本9.4%です。高学歴社会の中で多くの子どもは競争による挫折を体験し、自己肯定感を育てにくい状況があります。順調に進んできた大学生でも就職活動で挫折を経験し、更に社会人になっても厳しい現実に直面して自己評価の低下が生じ、社会的引きこもりに陥ってしまうこともあります。また、発達に課題を持った少年は、子どもの頃から怒られる経験を重ね、その経験をさせた家族や周囲の大人へのうらみが生じ、自己評価に関係する大人に対して反抗的な態度を示すようになり、それが非行につながっていくとおっしゃっておられました。このように、引きこもるなどの「内在化型行動化」、非行などの「外在化型行動化」の2パターンの不適応行動が危機の表れです。更に、この低い自己評価ゆえ、意欲のある自律した生活の維持や管理能力の減退、また、対人場面においてすぐにキレてしまうといった衝動的・反抗的な態度が見られるため、非行少年の課題として「生活能力」「対人関係」の改善を図ることを挙げておられました。

 最後に東日本大震災の被災地への臨床心理士の支援についてもお話し頂きました。被災地には発達障害を抱える子どもたちもおられます。突然のことに対応が困難な子どもたちもいます。そのような子どもたちに臨床心理士が支援を行っています。その中で臨床心理士の専門性が改めて認められるようになってきているとおっしゃっておられました。