平成20年度一次審査問題分析

問題

 【出題された問題(一部)】
・キャリア発達-Superのキャリア発達の段階(成長・探索・確立・維持・下降)、メンターなど
・心の理論(ADHDに心の理論は適用されるか、提唱者はプレマックか)
・P-Fスタディ(記録表からどの傾向を読みとる。GCR得点)
・津守式の検査領域5領域、デンバー式検査
・新版K式発達検査(作者、適用年齢は6歳6ヶ月までか)
・高齢者への心理療法(以前は不可能と考えられていたか、悲観的と考えられていたか)
・事例研究の倫理(心理検査の公表、事例を公表する際に特定できないようにイニシャルで記載したらよいか、クライエントが死亡したら発表してもよいかなど)
・検査法の自由度(風景構成法、ロールシャッハ・テスト、TAT、SCT、TEG)
・フォーカシング(手続きの順番)
・人格理論(オルポート、キャッテル、アイゼンク、ユングなど)
・TAT(各図版が何を表しているか)
・描画法の提唱者(マコーバーがDAMか?など)
・分散分析(等分散性、正規性の意味など)
・χ二乗検定、t検定
・ダウン症(TEACCHはダウン症のために開発されたか、ワシントン大学の療育プログラム、赤ちゃん体操についてなど)
・適応指導教室について-何をするところか、カウンセリングはしないか、勉強はしないか、教育委員会が運営しているか、出席日数に含まれるか、不登校の定義など

問題分析

 基礎心理学の問題は、大した傾向の変化は認められないように感じられます。
それに比べて、キャリア発達やエイジングなど、今回はやや発達に重点が置かれた出題になっているように思います。
この点について、勉強をした人にとっては重箱の隅をつつくような問題ではないのかもしれませんが、過去問のみを勉強した人は、受験で初めて目にした方も多いと思われます。
例えば、「高齢者の心理療法に関して、以前は不可能と考えられていたか、それとも悲観的と考えられていたかを選択する問題」では、『心理臨床大事典 改訂版』のp.1319にFreud,Sの悲観論についての簡単な説明があります。
解答としては、「悲観的」が正解になるのでしょうが、ここまで押さえておく事は非常に困難と言えます。
しかし、ともかくライフサイクルに基づいて発達の勉強を隈なくしておくことも要求されているということです。

 心理査定では、発達検査、投映法、質問紙法と心理テストに関連した出題が多く出題されました。
ロールシャッハ・テストの問題は、例年同様、事例問題を含め4問程度の出題であったようです。
片口法だけでなくエクスナー法に関する出題もあり、どちらかをベースに勉強するとしても両方とも学んでおく必要があります。
また、発達検査では、新版K式発達検査について「検査用紙第3葉がどの年齢に適用されるか」といった細かな部分を問う問題が出題されています。新版K式発達検査は、関西の心理臨床の現場ではよく使用されている検査であり、各現場の情報を入手しておくことも重要と思われます。

 心理療法に関連した問題では、箱庭療法、フォーカシング、ナラティブ・セラピーなどが出題されていました。これまでと比べて、心理療法に関する問題数は少なかったようです。

 事例問題は、やはり多く出題される傾向にあるようです。
今回は特に、学校臨床に関する事例が多く出題されています。
出題内容は、発達障害や虐待、自殺といった問題に関連し、教師との連携、コンサルテーション、危機状況への対応などが問われています。
また、病院臨床についても、自殺をほのめかすクライエントへの対応を問う問題もあり、今年度は自殺関連の問題が多く出題されています。

 以上の傾向を踏まえた上で、受験勉強する際の参考資料の一部を提示させていただきます。

①心理臨床大事典 改訂版(2004) 氏原寛 他共編 倍風館
②臨床心理学と心理学を学ぶ人の心理学基礎事典(2002) 上里一郎 監修 至文堂
③ガイドライン心理学問題集(2008) 大野木裕明・宮沢秀次・二宮克美 著 ナカニシヤ出版
④心理査定実践ハンドブック(2006) 氏原寛 編 創元社
⑤こころの科学 実践 心理アセスメント(2008) 下山晴彦・松澤広和 日本評論社
⑥臨床心理学全書 全1~13巻 誠信書房

上記の参考資料は、今年度の出題傾向から特に重要と思われる本です。
しかし、今後も事例問題や現場での対応に関する出題は多いと思われ、参考資料のみでの勉強では、現場での動向を把握できるところまで至らない可能性もあります。
そこで、現在の職場の領域、またそれ以外の領域に関する情報を収集しておくことも大切になると思います。